大阪・関西万博で輝く「ハロルド!」
知られざる公演までの舞台裏ストーリー

8月12日・13日に計3公演行われた「第7回岡山子ども未来ミュージカル『ハロルド!』大阪・関西万博公演」は無事に幕を閉じた。

初めて地元岡山から飛び出し、大阪・関西万博という大舞台に挑戦した今回の「ハロルド!」。席は予約時点ですべて埋まり、観覧者数は過去最高の3,000人を突破。SNSの口コミやアンケートでは「素晴らしい」「生きる勇気をもらった」といった声が数多く寄せられ、YouTube配信のアーカイブ映像は3週間で再生回数1万回を超えた。千秋楽では拍手喝采に包まれ、「ブラボー」と大歓声がホールに響き渡った。その大成功の裏にはどんなストーリーがあったのか。今回は実行責任者であるブランディング戦略室マネージャーの田中景涼(たなかけいすけ)に話を聞き、その舞台裏に迫る。

「やりたい」の一言から始まった挑戦

田中は第5回から「ハロルド!」に携わってきたが、当初は目指す姿が曖昧であることに疑問を抱いていた。目指す姿として掲げられた「世界とつながる」が、誰にとっても同じ意味を持つものになっていなかったからである。そこで「世界とつながる」=「『ハロルド!』に関わった人たちが世界で活躍する人物となる」ことと定めた。この「世界」は単に「ワールドワイド」を指しているわけではないと田中は話す。「『世界』は自分以外すべてを指す。子どもたちが自分の殻を破り、どこであれ、一歩外に出て活躍する人物になってほしい」と願いが込められている。そして今回は、その「世界」が大阪・関西万博の舞台であった。初めて慣れ親しんだ岡山を離れ、世界の舞台である万博で公演をすることとなったが、当然「初めて」の挑戦には様々な問題や苦難が付きまとった。

社内で大阪・関西万博公演を行うことを決定した瞬間を田中はこう振り返る。万博公演を実施するかしないかは非常に大きな議論になっていた。通常業務をしながら万博公演を準備するための人員ははたして足りるのか、公演にかかる費用は今までの約1.5倍となり、本当に実現できるのか――。長い議論の末、最終的に万博公演をしない方向に傾きかけていた。しかし、会議の終盤、最終判断を迫られた際、「やっぱり万博に出たい。『ハロルド!』の価値を世界に発信したい」――その想いを抑えきれず、田中は「やりたい」と意志を伝えた。その一言で万博公演の実施が決定。当初は反対の声が多かったものの、田中が意志を示したことで、次第に周囲もサポートへと動き出した。

資金調達と仲間の力

万博公演に向けての最大の課題は資金調達であった。第5回以前は結果検証ができておらず、多くの費用がかかっていたこのプロジェクト。第6回からは施策に対する結果検証を行い、無駄なことや効果が出ないことはきっぱりとやめ、協賛企業も増えたことで健全な体質となり、第5回に対して1千万以上収支を改善することができた。しかし、大阪・関西万博の舞台で公演となると、今までかかってこなかった遠征費や人件費など多くの費用がかかってくる。やっとの想いで改善した収支が再びふりだしに戻ってしまうのではないかという不安が常に頭をよぎった。そんな中、最も資金調達に協力してくれたのはグループ会社の人たちであった。協賛プランの水準を前年の2倍に増やし、前年を大きく超える目標金額をグループ各社に依頼したが、田中の「やりたい」という想いを尊重し、みなが資金集めに協力してくれた。その結果、協賛企業数は250社以上となり、協賛金は過去最高額となった。「地元岡山ではなく大阪での公演となり、目標金額が2倍になる中で、グループ各社の人たちにとって大きな負担だったと思う。それでもみな不平不満を言わず、『ハロルド!』のために行動してくれたことに、本当に感謝している。グループの結束を改めて感じた瞬間だった」と田中は語る。

万博公演の試練は資金繰りだけではない。なぜなら、万博で開催するということは前年踏襲で進められることが一つもないからだ。開催時期は3月から8月に変更。稽古場の調整や、万博協会との打ち合わせ、人員の調整、そして新しい会場での公演など、何から何まで一から組み直し、考えなければならなかった。たとえば、岡山県庁や岡山市役所、地元企業を訪ね歩き稽古場を探し、夏場に備えて契約しようとした公共施設の冷房が故障していることが判明。立てていた稽古スケジュールを急きょ見直すことになった。さらに苦労したのが万博協会とのやり取りである。問い合わせは放置され、決まったはずのことが二転三転するなど、対応は難航した。企業広告のルールも曖昧で、公演1か月前に承認済みだった協賛社名入りのサンプリング品が突然却下される事態も発生。そこから協会との交渉を重ね、却下からわずか1週間で新しいサンプリング品を完成させた。

言葉にしたから実現した未来

ただ、万博に出るという意志を貫いたことを後悔した日は一日もないと田中は語る。「もちろんトラブルや大変なことは数えきれないくらいあった。ただ、この会社で自分がやりたいという意志を掲げて、それを言葉にすると周りのメンバーは支えてくれ、やり遂げられるような環境をセッティングしてくれる。自分一人では絶対にやり遂げられなかった。『ハロルド!』にかかわってくれた全員に本当に感謝している」と達成感をにじませながら語った。

一時は実施が危ぶまれた万博公演だが、あの時「やりたい」の4文字を言葉にしていなければ、こうして子どもたちが万博の舞台で輝くことはなかったのかもしれない。

本番当日、1日目の初回公演が終わった瞬間の感動は、今も田中の心に鮮明に刻まれている。子どもたちが一人も欠けず、大きな事故もなく1日目を終えられた瞬間の感動はひとしおだった。「1日目は子どもたちが今まで頑張ってきた成果が出て、本当にいい公演だったと心から安堵した」としみじみと語った。子どもたちは稽古初日から本番まで2ヵ月半という短期間で舞台を仕上げなければならない。最初はセリフを飛ばしてしまったり、歌の音程が合わなかったり、うまくいかないことがおおいにある。ただ、プロの俳優と肩を並べ、レッスンを重ね、素直に吸収し、子どもたちはどんどん成長していく。そうして完成した舞台は観ている人の心にまっすぐに刺さるものがある。本番では多くの大人たちがハンカチを手放せなくなっていた。「人を感動させる」ということは生半可の覚悟では成せない。そんな子どもたちの覚悟と素晴らしい練習の成果を是非多くの人に観てもらいたい、田中の原動力はその一心であった。

成功の鍵は“事前準備”と“仲間への信頼”

公演当日の運営はトラブルがいくつも発生したが、不思議と焦りはなかったと田中は語る。会場図面や配置図はすべて頭に入れており、当日の運営は事前にシミュレーションしていた。さらに、万博協会から配布された何十種類にも及ぶ合計500ページ以上のマニュアルやガイドラインを読み込み、想定を重ねていた。そのため、トラブルが起きても的確に判断することができたという。「しっかりと準備をしていたからこそ当日は落ち着いて対応できた。自分が落ち着いていないと、周りも余計に焦ってしまう。だからこそ事前準備が大切だと改めて感じた。そして、現場の運営は一緒に取り組んでくれた信頼できる事務局メンバーやホールディングスの仲間に100%頼った」と語った。成功の鍵は”事前準備”と”仲間への信頼”であった。

「ハロルド!」が示したグループの力

今回の挑戦は、子どもたちの努力に加え、多くの社員や協賛企業の支えによって実現したものであり、日本カバヤ・オハヨーホールディングスグループの総合力を体現する舞台となった。そこには、舞台に立つ子どもたちの真剣な姿と、それを支える大人たちの尽力があり、互いに刺激し合いながら成長する姿があった。

子どもたちにとっての挑戦と成長の経験は、単なる一度きりの公演にとどまらず、将来を形づくる大切な学びとして記憶に残るだろう。そして社員や協賛企業にとっても、この活動を支えた経験は、「ハロルド!」の意義を再確認し、自分たちの仕事の誇りややりがいを感じる貴重な機会となった。万博公演は、グループの使命である「人物育成」を示す象徴的な取り組みであり、今後もこうした活動を継続し、社会に貢献しながら新たな挑戦を重ねていく。

第7回「ハロルド!」大阪・関西万博公演のYouTube配信アーカイブ映像はこちらから!