池袋店は、都内有数の巨大ターミナルである池袋駅に隣接する西武池袋本店9階に入居。チワワなど小型犬がブームとなった2000年代初頭には売上高は5億円に迫る勢いだったが、その後はチェーン店などライバルの増加もあって頭打ち状態に。2008年のリーマンショック以降は低迷期に入っている。
店舗に入り気付いたのは、「当たり前のことが全然できていない」ことだった。お客様への声掛けもほとんどない売り場の様子は、百貨店の売り場経験が豊富な渡邊にはじれったくもあり、「これでは探し物をするお客様には十分応えられていないだろうな」と思い至り、「まずは自分が積極的にお客様に声掛けしていくことを見せていこう」と決めた。
店長の松井勝寛によると「池袋店には勤務年数の長いスタッフが多く、今の環境に慣れてしまいこれが当たり前。何もしないでも売れる、忙しい時期が長かったことから、『まずはレジ』という行動が知らず知らずのうちに染みついていたのかもしれない」と振り返る。
本部から直接やって来た役職者から指摘された当初、松井にもこれまでのやり方へのプライドがあり“小さな反発”は正直あったという。しかし、上からの押し付けではなく、生き物に関する知識では劣っても積極的に売り場でお客様と会話を交わす渡邊の姿を目にするうち、お客様との距離が近い小規模店の勤務経験もある松井自身は「もともとは池袋店でもしっかり接客していたはず。(渡邊の指摘と行動で)それまで見えていなかったところに視野が広がり、自分の中で優先順位が変わった」と、意識を切り替えるまでにそれほど時間はかからなかった。
その気付きをスタッフに浸透させるため、現在は「何か気付いたことがあるたび声を掛け、接客の重要性に気付いてもらう」ことを心掛けているそうで、「すぐに変わるのは難しいかもしれないが、まずは私や主任・副主任たちが率先して動き、やって見せることで意識を変えていきたい」と話す。
次の課題として位置付けるのが、商売におけるPDCAサイクルの向上。「これまで年間の営業カレンダーも現場任せ。ある商品を何個売るために何個仕入れるというような計画を立てることは苦手で、時には棚一面に同じ商品が並ぶこともあった」。好みの多様化でベストセラーは生まれにくい時代。だからこそ「みんなが売りたいものを明確にし、この期間にこれだけ売ろう。そのためにこういうことをしよう…と方針を共有することが重要だし、それがお客様の気付きにもつながるはず」と渡邊は話す。
現在、来店者アンケートを作成し、POSデータだけでは把握しきれない売り上げの“裏側”にある機会ロスとなったニーズなどの把握に努めている。もちろん、アンケートを依頼する行為は接客そのものであり、その結果、スタッフ間で情報共有が促され、上意下達だったコミュニケーションが双方向化し始めた。「お客様から見ても、以前は『今は話し掛けないで』というムードがあったかもしれないが、最近は(池袋のスタッフは)よく話を聞いてくれると言っていただくこともある」と、松井はスタッフの意識の変化に手応えを深めつつある。