価値を創り伝え届ける
リソース集中し一点突破目指す
カバヤ食品 マーケティング本部長 宮川孝一
カバヤ食品のマーケティング本部長に着任した宮川孝一は、前職のライオンでお風呂用洗剤「バスタブクレンジング」等のヒット商品を生み、育ててきた人物である。そんな宮川のこれまでの仕事ぶりや入社した経緯、人物像を紹介すると共に、宮川が見据える、カバヤ食品の未来について聞いた。
新卒でライオンに入社した宮川は研究開発部門に配属され、商品開発に明け暮れた。しかし、当時は社内に「品質さえよければお客様は買ってくれる」という甘えにも似た考えがあり、よい「モノ」をつくってもその品質のよさをお客様に上手に伝えられずに売れないことが多かった。「モノ」の価値を伝え届ける重要性を痛感した宮川は、2008年に自ら希望してマーケティング部門に移った。

異動した当初はコスト度外視の「最高レベルの高洗浄力洗剤」をつくり高品質をウリに発売したが、市場の反応はいまひとつ。学んだことは、世の中のあらゆる商品は一定以上の品質を有しているため、「既存品質の改良」による差別化は難しいということ。逆に品質で劣っているはずの商品の方がお客様の評価が高いこともあり、そこには「ブランド」という力が働いていることに気付いた。高品質=売れる、ではない。モノが売れるためには品質が高いのは当たり前として、その価値をブランドに込めて伝え届けることこそが重要であり、そのために各メーカーがしのぎを削っている。マーケティングとは、価値を創り伝え届けること。つまり、「創ること」と「伝え届けること」の両立によって、初めてモノが売れるのである。
こうしてマーケティングの重要性を知り、大きな仕事にもチャレンジして成果を出していったのだが、「特定の会社の特定のやり方で仕事に取り組んでいると、能力やスキルを成長させるには限界がある」と感じ、マーケッターとしてさらなる成長を目指し転職を決断。新しい舞台に選んだのが、元々興味を持っていた食品業界であり、「良い商品を持っているのに、それを上手くお客様に伝えられていない」と、前職で自身がマーケティング部門への異動を考えたきっかけと同じ課題を抱えるカバヤ食品を選んだ。
宮川が見たカバヤの社員のイメージは、「真面目で情報やスキルを取り込んで成長しようというどん欲さがある。入社したばかりの私をすぐに受け入れ、協力的に接してくれるムードが好印象でした」。また、慣れてくると「カテゴリーや商品の戦略がはっきりしない」という課題も目につき始めた。宮川が考えるブランディングとは、お客様の中に少しずつ「このブランドはこういうもの」という認識を積み上げていくことで、お客様の意識の中にゆるぎない価値を作り上げる、いわば「蓄積するもの」である。
そこを明確化できていないため、努力のベクトルがバラバラになり、上手くブランドの価値が積み上げられていないと感じた。「独自の価値をもった高品質な商品が、まだ広くお客様に浸透しきれていないことを歯がゆく感じた」と振り返る。
まず宮川が取り組んだのはグミカテゴリーでの戦略やブランド方針を定めて、目標に向かうための方法論をメンバーに浸透させることだった。さらに、営業部門とも戦略を共有し、巻き込むことも進めている。こうすることで、開発と営業の努力のベクトルが同じ方向を向き、価値が積み上げられると考えたからだ。その後、徐々にメンバーの意識が変わってきている手ごたえを感じているという。

宮川は、戦略とは「戦いを略すこと、つまりやらないことを決めること」と捉えている。仕事をしていけば「やった方が良いこと」は無数に湧いてくるが、その中で高い効果が期待できるものだけに注力して、やらないことを決める勇気を持つことが重要。弱いブランドを強くするには、「リソースを集中させた一点突破の尖った攻めの施策が必要」と、これまでの経験から学んでいた。
今後の目標について宮川は、「多くのお客様に、カバヤという会社名と商品・ブランド名がしっかり結びついた形でファンになってもらうこと」と話す。「共通の価値を持った強いブランドや商品を生み育て、”カバヤブランド”という横ぐしを刺すことで、会社に価値を蓄積させたい」と戦略を描く。
仕事に対してこだわりを持ち、常に上を目指している宮川は、趣味の自動車に対してもとことんこだわりを持っている。休日にはレースにも参加するほどで、運転の技術と車のセッティングという2つの要素をどこまでも突き詰めていけるところが魅力という。「運転技術にはこれがゴールとなるものがなく、どこまでも上達を目指せることに奥深さややりがいを感じる。さらに、きっちりと勝敗がつくので突き詰めた結果が目に見えることがとても楽しい」と一番の笑顔で語ってくれた。