田村憲和(リーダー・関東第二工場 充填係係長)
加瀬浩一(関東第二工場 処理係主任)
大草隆史(品質管理部 関東品質管理課)
佐野正行(生産技術部 関東工務課係長)
何としても結果を出したい
「生産性120%」の先にあるもの
田村憲和(リーダー・関東第二工場 充填係係長)
加瀬浩一(関東第二工場 処理係主任)
大草隆史(品質管理部 関東品質管理課)
佐野正行(生産技術部 関東工務課係長)
2年以上にわたり社会経済活動に大きな影響を与えるコロナ禍にあって、日々商品を製造し、消費者の元へ届け続けることは決して当たり前のことではなく、現場を支える1人ひとりの不断の努力があってこそ。そんな中、オハヨー乳業製造本部は2021年度から3年計画で「係横断小集団プロジェクト」をスタートした。部署の垣根を超えて目標達成を目指す新しい試み。関東第二工場のメンバーに、これまでの取り組みとともに、工場で働く従業員がどのような課題を感じ、プロジェクトを通じて何を実現していこうとしているのかを聞いた。
製造本部では2021年度、「私の約束」に基づく目標として「人物育成」「生産性向上」「品質向上」の3本柱を掲げ、10年目標「1ライン1商品、1商品売上高100億円×営業利益率15%以上」のマイルストーンとして「生産性120%」などの3カ年目標を設定。その実現を目指すのが同活動で、各工場で1チームずつ、計7チームが昨年4月から目標達成に向けて始動している。

これまでにも小集団活動自体はあったのだが、いずれも問題解決型。今回のように目標を掲げ、部署を横断して選抜したメンバーが集まり、実現を目指すのは初めてのケース。目標達成の先には「人物育成」もにらんだ取り組みだ。
焼プリンを製造する関東第二工場では、充填係係長の田村憲和をリーダーに、処理係主任の加瀬浩一、品質管理課の大草隆史、工務課係長の佐野正行の4人のメンバーと工場管理者が月2回のペースで議論を重ねている。大まかにいうと、製造現場の田村と加瀬が生産性向上や省力化が見込めそうな案を出し、それに対し大草と佐野が品質管理や設備、メンテナンス、稼働率などの面から実現性や課題を指摘。課題は各部署に持ち帰り、それぞれが検証を加えた上で2週間後にさらに議論を深めていくというスタイルだ。
オハヨー乳業の製造本部は近年、慢性的な人手不足もあり、比較的異動が少なく、長期間特定の部門に配属され続けることが多い。そのため特定業務のスペシャリストは育ちやすいが、「全体最適」を考えられる人物が育ちにくいという問題がある。同じ工場で働いていながら異なる部署と議論する機会はほとんどなく、「隣の工程のこともよく分からない」人が大半。その結果「新しい機械を入れるときには工務が考え、品質管理が検証してわれわれはそれを使うだけ。何かトラブルがあれば『製造現場のことが分かっていない』と他責にするムードさえあった」と加瀬は現状について話す。
今回のプロジェクトでも、品質管理の大草は「当初は現場の課題がよく分からず、何からすればいいのか分からない」状態だったが、焼プリンは製品の中身を作る工程を担当する「処理係」と、カップを供給し充填する川下の「充填係」の連動性が他の製品より高いという特徴があり、田村と加瀬は日ごろから顔を合わせれば意見交換する間柄。チームのリーダーを任された田村は「担当する充填だけでなく、工場全体のことを考えなければ改善はできない」という意識を強く持つようになった。
また、工務の佐野は、これまでにもヨーグルト工場の立ち上げなど大きなプロジェクトに参画。研究開発部と議論しながらプログラムから携わることで「自分が今やっている作業がプロジェクト全体のこの部分につながると分かるのでやりがいがある」と言い、以後、目の前のことだけでなく全体を俯瞰的にとらえ、仕事の意味や意義まで考えるようになった。このような問題意識を持つメンバーによる議論が軌道に乗るまでに、それほど時間はかからなかった。
もともと工場の課題は、設備が老朽化し、自動化・省人化が遅れているため手作業に頼りがちで、朝早くから夜遅くまでフル稼働状態が続いていることなどはっきりしている。工場内の設備にしても、「人」より「機械」ありきの面もあり、オーブンで焼く工程のある焼プリンは、場所によっては40~50℃という過酷な環境下での作業を強いられている。
雑談の中で改善案を話すことはあるものの、日々の業務に追われる中で会社に上申する形にするには高いハードルがあった。ただ、今回は「部門を超えて出し合った自分たちのアイデアを、月1回の生産会議で上層部を含めたメンバーに共有する場が設定されており、風通しの良さを感じている」と佐野は話す。

本来、品質管理の立場と、処理や充填の効率化案は相反するケースがあり、大草も「作業効率を優先して何でもなくす、減らすというのは違う」と思っていたそうだが、ミーティングを重ねるにつれ、「現場がどんなことに困っているのかが分かるようになると、こちらの意識も『どうすれば達成できるか』に変わった」と振り返る。まさに「生産性120%」という目標達成に向け提案されるテーゼに対し、異なる部署の目線でアンチテーゼをぶつけ、そして全体最適となるジンテーゼを導くサイクルが生まれつつあるというわけだ。
生産性120%は、ラインのスピードアップや設備を増設すれば達成可能だが、設備のキャパシティーや従業員の配置、拡張スペースの問題などから非現実的。そこで現時点で浮上しているのが、「機械が止まっている時間を短くし、トータルの充填個数を増やす」という改善手法。そのため、充填の順番や位置を変更し、洗浄の回数減と時間短縮を図るほか、関東第一工場を含めた各部署で行っている原料の計量を一括で行うことで効率を上げ、浮いた作業者を他の業務に回す―など、細かい見直しの積み重ねで生産性向上、省力化を図ることが検討されている。
他工場のチームと取り組み内容を共有することで、「同じ充填でも作るものが違えばやり方が全然違うことが分かったし、別の部署の業務を知ることで自分の持ち場に生かせることも多い。もっと学びたい気持ちが強くなった」と田村。部署や立場で情報の共有が不十分なため、意識は目先の仕事に向きがちだったが、今回のプロジェクトではその反省に基づき、「ミーティングで出た宿題を持ち帰り、検証するためにまずは中堅メンバー中心に協力を要請。彼らは若手にも手伝ってもらい結果を出すという “流れ”ができつつある」と言い、組織全体の底上げつながる機運が生まれつつある。
「従来は部署ごとの活動で、(別の部署と)話す機会のないことを当たり前のようにとらえていたが、今活動はいろんな部署の人とディスカッションすることで、互いのモチベーションが上がっている」(佐野)「品質管理の立場で『こうすればいい』と思っても、部署が違えば視点も違う。求めているものを理解するためにも、定期的に顔を合わせて困り事を共有できる時間が欲しい」(大草)など、コメントの端々から、工場という組織に「横ぐし」を刺す意義を彼らが痛感しつつあることをうかがわせる。

本社工場、関東工場の飲料部門など幅広い部署で勤務した経験があり、各チームとの情報交換などプロジェクト全体の「横ぐし」のような役割を担う加瀬も、プロジェクトをきっかけにITリテラシーの高い若手を巻き込むことを強く意識するようになったという。「プロジェクトの目的は生産性120%という目標を達成することではないはずで、DX化を進めるためには若手の力が不可欠。何かあれば『だれかがやってくれる』ではなく、いろいろな課題を自分事としてとらえるようになるための一歩にしたい」と考え、コミュニケーションを取るのが苦手な若手社員にも主体性を持たせるよう働きかけている。
フル稼働に近い状態から目標を達成するには、これまでの延長線上の考え方では見通しの立たないことは間違いないだろう。メンバーを代表し、田村は「リーダーとして過程で評価してもらうのではつまらない。昔から温めていながら詳しく検証できていなかった案も今回は細かいところまで調べており、提案した以上は何としても結果を出したい。本気でやる」と決意を語る。

2000年の入社以来、関東第二工場充填係に所属。15年に係長となり、面談を通じて部下1人ひとりの個性把握に努め、得意分野を生かせる組織づくりに注力している。山口県出身。44歳。
学生時代に経験した北海道実習で酪農にあこがれ、人工授精師の資格を取得。多忙のため、趣味のブラスバンドの練習時間が十分に確保できないのが現在の悩み。京都府出身。42歳。
2003年入社。処理係を9年近く経験。その後、品質管理へ異動したことで「製品づくりと法規制との関係性などを学び、自分自身の視野が広がった」という。千葉県出身。41歳。
大学で電気工学を学び、大半が電機メーカーを進路に選ぶ中「柔らかなイメージで面白そう」と志望した。技術的知見に基づくシミュレーションを通じ理想の実現を目指す。千葉県出身。48歳。